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No.01/NO.02/No.03/No.04/No.05/No.06/No.07/No.08/終話

「いったいこんな夜更けに、何をやっているんだい?」
「フィン!」
 突然現れた、ほっそりとした体躯と整った容姿の少年に、図書館にいた全員の視線が集まった。
「あなたこそ、こんな時間にここに何の用なの?」
 キトゥンが腕組みをしながら、フィンと呼ばれた少年に詰め寄る。彼はキトゥンやリナと同じ10年生。同じエリート同士、面識があるらしい。
「僕は借りた書物が読み終わったから、返しにきただけさ。君だって、知ってるだろ? 僕はエルフの血が混ざってるから、そんなに睡眠時間はいらないんだよ。図書館の鍵は、学生証と、一定レベル以上の“解除”の魔法が使えれば開くんだから…」
 フィンが穏やかな声音で答える。毒気を抜かれたキトゥンが溜息を吐いた。
「…そうだったわね。じゃあ、ちょっと聞くけど…」とキトゥンは今までの簡単な経緯と、今睡眠時間を削って探している書物のことを彼に説明した。
「ああ…。その書ね。こないだ読んだよ。確か一番右の書架の、三番目の列にあったと思うよ」
 あっさりと所在が分かって、今夜は徹夜かと覚悟し、脇で見守っていた三名の顔に希望がともる。
 机の上に運ばれた書は、キトゥンの予想に反して深緑の革の表紙だったが、確かに『季節の精霊・冬の書』と書いてある。しかしもちろんこの本にも呪文の鍵がかかっている。しかもとびきり強力そうだ。
「ちょっと、フィン! この本開いてよ。こないだ読んだばっかなら、解除呪文大体覚えてるでしょ?」
 もちろんキトゥンにもできることだが、今は非常事態。最近読んだばかりの者の方が効率がいい。もしかしたら、聖人の“かがり火”が拝めるかもしれないわよ? とフィンの興味を引いてみた。
「わかった。でも条件がある。その“かがり火”捜索に僕も同行させて欲しい。でも手助けはしない…」
 そこの三人が捜索隊の本命なんだろ? とフィンに言われて、セーラがこくこくと頷く。
 というわけで、書物の鍵を開く事になったフィンが、全ての呪文を解除し終えた時――。
 空は白々と明け、やっぱり一睡もできなかったエコ達は、眠い目をこすりながら書の中身に相対することになった。

「おお! そっか、そっか~! その書に出てくる《聖なる火》が、“かがり火”のことなのかもってことね?」
 またもや背後で上がった声に、書を囲んでいたメンバーが振り返った。
「ティーナ!」
「ティー…!」
「朝早くから感心、感心! なるほど〜! さすが、キトゥン!よく気がついたわね。リナ、セーラ達と合流できたのね? よかったこと」
 皆の様子で事情を把握したティーナが、ふふふと微笑みながらスルリと輪の中に割り込んだ。書物に触れると、まるで全ページを記憶しているような速さでページを繰る。いや、実際記憶しているのだろう。
「そうそう、ここのページよ。ええと……『“冬の精霊王について”冬の精霊達は、妖精界の北の果て、白き氷の神殿におわす冬の精霊王によって統率されている。王は麗しき少年の姿で、透き通るような白い肌、凍れるアイスブルーの瞳、白銀の髪を有している。しかしその心は温かく、来るべき春のため、厳寒な冬をあえて大陸にもたらすとされる。ただ稀に、春から秋の間眠りにつく彼の心が、自らの冷気に凍りついてしまい、冬を迎え、春が近づいても目覚めず、褥から起き上がらぬ場合がある。その時、主のいない冬の精霊達は暴走し、春の精霊達は逃げ惑い、雪見祭が近づく頃学園には冬の精霊王の神殿が出現する。エレガ大陸はいつまでも春を迎えず、世界は雪と氷に閉ざされたままだろう。これを回避するには、閉ざされた城の扉を開き、冬の精霊王を覚醒させる必要がある。この場合、《聖なる火》を用いて彼の心に火を灯さねばならない。記録によれば、この現象は750年周期でおこると言われる…』ふぅ〜…ああ、疲れた…! でもここにはどこにあるかなんて書いてないわよ? しかもこんな現象、めったに無さそうだしねぇ?」
 やれやれとティーナが顔を上げると、周りのメンバーは誰もが押し黙っている…。元々内容を知っていたキトゥンとフィンはともかく、後の三人は青い顔だ。
「それがね…、ティーナ…」代表したキトゥンが口火を切った。
「まあ、ともかく窓の外を見てもらえばわかると思うわ」
「?」
 ティーナは首を傾げながら、格子の嵌った大きな窓から外を見下ろした。そこには――。
 学園の周囲に広がる雪原の中に、朝日を受けてキラキラと光輝く氷の神殿が威風堂々とそびえていた。
「あら、まあ…これは……。じゃあ、絶対にかがり火を見つけないといけないってことね。楽しくなりそう!」
 逆光でよく見えないティーナの顔はどうやらこの事態を楽しんで微笑んでいるようだった。

 その時沈黙を裂くように、大時計の鐘がなった。そろそろ学園が始動する時間だ。
「じゃあ、こうしましょう!」
 キトゥンが事態を収拾すべく、仕切り始めた。
「エコ、セーラ、リナ! とりあえず、この件はあなた達に一任します。でも期限つきよ! これは世界にかかわる重要なことだから…。3日間! 雪見祭の2日前までね。それを過ぎても解決しない場合は、オール・セインツが介入します。フィンは三人に同行して事態を逐一報告してちょうだい。いいかしら?」
 なんか大変な事態になってしまった。ぼくらはもう手を引こうと、エコがセーラの袖を引っ張るよりも早く、
「ええ、わかったわ。必ずわたくし達が解決してみせます!“かがり火”の大いなる秘密も、冬の精霊王の覚醒も! ね、エコ!」
 意気込んだセーラが、にっこりとしかし有無を言わさぬ態度でエコの顔を覗き込んだ。
「う…うん。わかった…」
 その瞳に射られたエコには、そう言う以外の道は残されていなかった。

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