「はぁ〜、今日もいい天気だなぁ」
寮の窓に頬杖をついて、澄み切った空を見つめながらエコ・クラントは嬉しそうにそう言った。
進級試験を無事に終えて、なにやらとても開放的な気分になっているのだった。
「もうすぐ学園祭だし、なんか良いことありそうだなー。ふふふ…」
と、一人しまりのない顔をしていると、急に後ろから声がした。
「なに、一人で笑っているの、エコ?」
「わあっ!」
エコはびっくりして窓から落ちそうになった。
「セーラ、危ないじゃないか! だいいち、なんでぼくの部屋に勝手に入って来てるんだよ」
とエコが怒って言っても、全く気にもとめない様子で、
「扉を開けたままにしておく貴方が悪いのよ。そんな事よりも、いくら浮かれている貴方でもあの声は聞こえたのでしょ?」
と言った。
あぁ、一人で笑っている所をよりにもよってセーラに見られるとは。また弱みを一つにぎられてしまったようなものだ。しばらく言われ続けるぞ、と思いつつエコは、
「そんな事って…。もちろん聞こえたよ。あれは食堂のおばちゃんにだって聞こえたのだから。でもそれがどうしたの。…ま、まさかまた変――」
と言うのをさえぎってセーラは、
「変なこと、って言いたいのかしら? わたくしはただお手伝いをしようと思っているだけよ。前の2つの事件もわたくしの協力で無事に解決したのですからね。さあ行くわよ、エコ。リナも呼んであるから」
と言ったので、エコは慌てて言った。
「行くってどこに? それに何でぼくも行いかなきゃいけないんだよ」
「そんなの決まっているじゃない。図書館よ。そろそろあそこでは何か始まっているはずよ。貴方は、背が高くなりたいのでしょ? だったらわたくしと一緒に行くのよ」
セーラはメチャクチャなことを自信たっぷりに言いきった。
エコは納得はいかないものの、これ以上言ってもいつもと同じことになるだけだと思い、大きなため息をついて、窓からはなれた。
――さわやかな風の吹く渡り廊下…
「今年の学園祭で…先輩、何か発表をされるそうよ」
「えぇ、本当! 私、あこがれているの。…先輩に」
すれ違いざまに、上級生達がそう話しているのを入学したばかりのティーナは耳にした。
「…先輩って、あのときの…」
そうつぶやいて、入学式で目にした、あの凛として美しい姿を思い浮かべた――
パチッと目を開いたティーナは、一瞬自分がどこにいるのかわからなかった。よく見ればそこは見慣れた図書館で、いつものように本の山に埋もれていた。
「あぁ、調べものの途中で寝ちゃっていたのね。夢まで見てしまったわ」
とつぶやいて、はたと気がついた。
そう、自分は夢を見ていた。あの事件の少し前のころの夢を。なのに、たった今見ていた夢なのに、消えた少女の名前も顔もぼやけてしまって思い出せない。自分は確かに夢の中では、はっきりとわかっていたはずなのに…。
「おかしいわね」
ティーナは釈然としない何かに、少しイライラしつつもまた資料の山にとりかかった。
「あぁ、もう。次にキトゥンが来たときになにもわからないままだったら、何を言われるかわかったものじゃないわ。だからオール・セインツはいやなのよ…」
オール・セインツ、ティーナはこの言葉に何か引っかかりを感じた。
そう、あの消えた少女はとても優秀だった。…今のキトゥン以上に。ということは、彼女はオール・セインツの一員だったのではないだろうか。だとしたら、彼らは何かをつかんでいるはずである。
ティーナは自分の考えに没頭していたが、だれかが近いづいてくる気配に顔をあげた。うずたかく積まれた書物の向こうをみて、苦笑してしまった。
また、いつものメンバーがあつまったみたいね。
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