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「キトゥンはともかくとして…。オール・セインツが何かをつかんでいるのは確かだわ」
 ティーナの言葉に他の者が耳を傾けていた。ここは図書館の現在は使用されていない小部屋の一つである。背もたれのない椅子の埃を魔法を使わずに拭い。声をなるべく潜めて話し合っていた。
「それって、オール・セインツを敵にまわすってことですか?」
 リナが少し興奮した様子で尋ねた。
 他の者は無邪気そうにいうのを聞いて、ため息をついた。
「貴方って…」
 セーラはやれやれとリナに向かって言い出して、何かに急に思い当たった様子で言葉を切った。
「待ってちょうだい! ティーナさん、前の2件も含めて、すべてはオール・セインツが仕立てている脚色という可能性が強いのかしら?」
 ティーナが頭を振る。
「いいえ、オール・セインツにそこまでの権限はないはずよ。たぶん…、起った事件に対して脚本を書いている可能性は大でしょうけれど」
 それを聞いて、セーラの目が不機嫌に細められた。すでに琥珀色の瞳は好奇心から、咎めるような眼差しに変わっている。
「それでしたら、わたくし達は、この埃まみれの小部屋にいなくてはいけない理由はないのではありませんの。相手に気取られないように魔法も使わないで、こそこそと…。そのうえに椅子のお掃除までさせて」
「したのは君じゃなくて、ぼくだよ」
 エコがセーラの右側でしっかりと事実を訂正した。
「当然です。わたくしはお掃除など、魔法以外ではした事はありませんもの」
 セーラが毅然として言った。悪びれるとかいった類の言葉は彼女の辞書にはないものなのかもしれない。ルーセン家って、どういう子供の育て方をしてきたのだろうか、とエコは気になりつつ、それには触れずに他の事を聞いた。
「それなりにオール・セインツにも範疇がある。という事ですよね、ティーナさん?」
 ティーナが頷く。
「あくまでも、ダイナ学園の生徒会よ。噂では行使力は教師や理事などをも上回ると言われているけれど…。実際の権限は学園長が担っているのでしょうし、彼らも学園の生徒には変わりないでしょう。だから…」
「えぇー! そうなんですか? 謎の生徒会とか言われていて、聖人候補っていう噂も高くって、美男美女が多くて、それから…」
 リナの言葉は聞かなかった事にして、ティーナは話を先に進めた。
「私は例の彼女がオール・セインツだった可能性があると思っているわ。とても、優秀な生徒だったのよ。そして、最も気になるのは、彼女の記憶の名前に関する部分だけがポッカリと空いていてる点なの。連絡の取れた当時を知る卒業生にも尋ねてみたのだけれども、結果は同様だったわ」
 しばらくの沈黙の後、口を開いたのはセーラだった。
「考えられるのは、彼女は禁断の魔法に何らかの関わりが…。エコ、何処へ行くの?」
 セーラの話の途中でエコは椅子から立ちあがった。
 セーラは彼を見上げて咎めるような視線を送る。
「不味いよ。彼女が禁断の魔法に関わった人物を調べていたとしたら、ぼくらだって…」
 セーラの左眉がピクリと動いた。ティーナはその可能性も考えていたので、エコの言葉にことさら疑念を感じなかったのだが、セーラは…。
「貴方、何か知っているわね、エコ。確かに禁断の魔法に関わりがある可能性のお話はしましたけれど、関わった人物を調べていた可能性の方は話題にしていなくてよ」
 そういえば、そうね…。どうして急に話が飛躍したのかしら?とティーナは頭を捻った。
「…そういう、可能性もあると…」
「誤魔化そうとしても、あたくしには通用しなくてよ。貴方の事はどんな事でもわかってますもの」
 二人はそういう関係なのね、とティーナとリナはそれぞれに違う想像を膨らませて二人を見た。
「さあ、おっしゃいな!」
 すでに、セーラは椅子から立ち上がっていた。立ちあがると3cmだけ彼女の方がエコより背が少し高くなる。その分、セーラの威圧感がますます増すのである。
「……」
「エコ・クラント!」
「…先生…。マシュー先生と話していて、前にそんな事を聞いた憶えがあるんだよ」
 エコの物言いにだんだん不機嫌さが混じってくる。
 マシュー先生? そういえば、先生は当時はいらしたのかしら…。以前はよく、留守がちだったから……。リストから漏れていたわ。と、ティーナは思った。
「どうして、そんな重要な事をわたくしに話さなかったの?」
「べつに……。たまたま、話を聞いていて思い出したんだ」
 それに、君に話す必要もないだろう――とは付け足さないで、エコは不機嫌にセーラからそっぽを向いた。
 リナはそんな二人を水色の瞳で見ていた。好奇心旺盛な輝きをみせて。
 例の彼女は学園祭で何か発表する前に失踪したのは、確かだわ。それが、何かがわかれば今回の件との関連のあるなしも見えてくるのかもしれない、とティーナは考えていた

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