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「…それで、どうしてわたくしなのかしら?」
 エコの追加課題についての用紙を怪訝そうに見つめながら、セーラが言った。窓から差し込む夕日に、金色の髪がきらきらと輝いている。
 彼女がエコの部屋に押しかけてきたのは数分前。
 追加課題のことは聞きましたわ、と話を切り出された瞬間、エコは思わずため息をついてしまった。彼女が嫌いな訳ではなく、面倒なことには巻き込まれたくないからである。
「それが分かったら苦労しないよ。何だってセーラと…」
 小さく反論すると、
「あら、わたくしと組むのが不満なんですの?」
 耳ざとくそれを聞きつけたセーラに睨まれた。
 いつもながら強気な態度だ。もう少し柔らかい感じだったなら、きっとすてきな女の子なんだろうけど、とエコは密かに思っていた。あくまで密かに、だ。
 ふと、セーラが顔を上げた。
「エコのもう1つの課題はどんなものですの?」
「ダイナ学園の校歌について、だよ。一部だけだけれど。あーあ、これだけでもきっと大変なんだろうなぁ…」
 エコにとっては頭が痛い課題だった。おまけに進級試験である。ここで落ちてしまう訳にはいかないのだ。マシュー・ホナーは厳しい教師ではないが、それでも手を抜いてはならない。
「校歌?ホナー先生の課題は本当に変わっていますわね」
 とは言うものの、彼女の担当教官もホナーである、
「そういうセーラはどんな課題なのさ?」
「わたくしのはまだ秘密ですわ」
「秘密?」
「えぇ。レポートができあがったら見せてさしあげますわ」
「…ふぅん?」
 きっとセーラも変わった課題を出されたのだろう。
 でも、意外とやりがいがあって良いかもしれないな。ホナー先生にも何か考えがあって、ぼく達にこんな課題を出すんだろうし。エコはぼんやりとそう思った。
「それにしても、こんな課題…」
 戸惑ったように呟いて、セーラが追加課題についての用紙に目を戻す。
 彼女の手にした用紙には、

1.追加課題として、各々の将来の希望について物語にして提出すること。
2.この課題は、セーラ・リニー・ルーセンとの共同課題であること。
3.二人で議論を重ね、よく推敲すること。
4.量についての制限はなし。期限は他の課題と同じ。


 と書かれている。
「どうして将来の希望についてなんだろう? その上、物語を作らなきゃいけないなんて」
「あら、おもしろそうだとは思いませんの?ただレポートを書いて提出するだけの課題に比べたら、こちらの方がずっと楽しそうですわ! 物語は読むだけでなく、書くことも大事だと思いますし」
「…そうかなぁ?」
 セーラはエコとは反対に上機嫌のようだ。
「ところで、エコ?あなた、将来は絶対に背が高くなるなんて書くつもりじゃありませんわよね?」
 ふいに痛いところをつかれて、エコはぎくりとした。
 それは密かに考えていたことだった。セーラより3cmばかり背が低いとは言っても、彼はまだ成長期のはずなのだ。
 彼曰く、「もうすぐ、背が高くなるんだ」である。
 とすれば、物語の主人公は背が伸びた自分でも良いかもしれないな、と思った訳で。
「…か、書くわけないじゃないか」
「そう、それなら良いですわ。課題に私情を挟んではいけませんものね」
 そのための共同課題か。にっこりと微笑んでみせたセーラを睨みながら、エコは心の中で嘆いた。

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