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「あぁ、気がついたみたいだね」
「…アルヴィト先生?」
 ようやく落ちつきを取り戻したエコを見下ろしていたのは、マーリンとモーラ、そして、エコもよく知っているーー生物学の教官の、アルヴィトだった。
 寝癖のせいで少しハネた茶色の髪と、深い緑をたたえた細い瞳。優しそうな印象を与えるその人は、きょとんとしているエコに向かって、にこりと笑ってみせた。
「大丈夫かい?」
「あ…、はい。…あれ?」
 何でぼくはここで倒れているんだろうと、エコはぼんやり考えながら上体を起こした。
 音楽堂の扉を開けたところまでは覚えているのだが、そこから先の記憶がすっぽりと抜けている。何だか頭がずきずきする理由も分からない。
 ゆっくりと辺りを見まわしてみるが、音楽堂はいつもと何ら変わりはなかった。時々動く肖像画だとか、ひとりでに鳴る楽器だとかいったいわく付きのものにも、変化は見られない。
「ま〜だ大丈夫じゃないみたいね〜♪」
「全く、近頃の若い者ときたら!」
 マーリンとモーラのキーキー声が頭に響いて、エコは、また倒れてしまいそうになった。
 この2人の声には、何か特別な力があるのではないかと、彼は思う。
 何にせよ、いくら課題のためとはいえ、ここに来るべきではなかったのだ。
 それにしてもツイてない。ただでさえセーラとの共同課題のことで悩んでいるというのに、もう1つの課題の方でも苦しめられるなんて。これではいつ課題が終わるか知れたものではない。落第だけは何としてでも免れたいのだが…。
「まぁまぁ、ニ人共」
 ふいに、アルヴィトがやんわりと2人を制した。
「あんまり苛めたらかわいそうですよ。ところで、君は確か…エコ君だったかな?」
「はい」
「頭の方はまだ痛むかい? さっきはだいぶ混乱していたみたいだったから…、すまないね、気絶させれば何とかなると思ったんだけど…。力が入り過ぎてしまったかもしれない」
 混乱していた?気絶させる?
 何のことだろうと首を傾げるエコを見て、アルヴィトは苦笑した。
「状況が飲み込めないって顔してるね」
 そう言われても、覚えていないのだから仕方がない。
 エコはため息をついて、
「…あの、ぼくに何があったんでしょうか…?」
おそるおそる尋ねた。

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