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「そうですね…。そうします」
 正直いってもう2度とこの音楽堂には来たくないのだが、仕方なくエコは頷いた。
 よいしょ、と呟きながら立ち上がり、いまだ心配そうにエコを見つめるアルヴィトと、その背後で相変わらず騒いでいるマーリンとモーラに向かって軽く会釈する。
「心配おかけしてすみません。失礼します」
 エコがそう言って音楽堂を出ようとしたとき、今まさに開こうとしていた扉が勢いよく開いた。扉はエコの鼻先をかすめていく。
 今度は何事かと思わず後ずさるエコの瞳に、見慣れた人物の姿が飛び込んできた。
「エコ先輩じゃないですか!こんな所で何してるんですか?」
 そこに立っていたのはリナ・ミラージュ、エコもよく知っている、10年生の少女だった。
 しかし、それはこちらの台詞だとエコは思った。こんな所に好き好んで来るような者はほとんどいない。リナも何か用事があって来たのだろうが、なかなかの度胸である。
「リナこそ、何でこんな所に…」
 その質問には答えずに、リナはエコの背後を指さした。
「あっ、アルヴィト先生!やっと見つけた!」
「え?」
 訳が分からず立ち尽くしているエコに向かって、
「アルヴィト先生は私の担当なんです」
 とリナが説明してくれる。
エコやセーラの担当教官がホナーであるように、リナの担当教官はこのアルヴィトなのだ。
「…先生、いつになったら私の課題を教えてくださるんですか?他の皆は、もう課題をもらって、それに取り組んでるっていうのに!」
「うーん・・・それが、まだ考えてないんだなぁ」
「…あの、先生、まだ考えてないって?」
 本来ならば、すでに課題の内容がそれぞれの生徒に告げられているはずである。
 担当教官にあるまじきその答えに、エコは内心驚きながら尋ねた。
「いや、私はこういうことを考えるのが苦手でね。自分が調べたいと思ったことを調べてくれれば、それで良いのだけれど…」
「でも、それじゃ困るんです。何を調べて良いやら、さっぱり分からなくて」
「そうだなぁ…。そうだ、良いことを考えたぞ」
 アルヴィトがふいにエコの方へ向き直った。
 エコの胸の内に、さっと嫌な予感が走る。そう、それは例えばセーラにコダマで呼び出されたときのような…。
「リナ、君はエコ君と一緒に校歌について調べなさい。2人で行った方がきっと手っ取り早いだろうしね。ホナー先生には、私から話しておこう」
「…ひょっとして、共同課題ですか?」
恐る恐る尋ねたエコに、アルヴィトはにっこりと頷いてみせたのだった…。

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