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 エコが、はっ! となって気がついた時にはすでに遅かった…。もう、相手 の陣中の虜になっていた彼である。

 エコは自分の課題を終わらせる近道として、専門家の話を聞くために音楽堂 の二人の教官がいる小さな扉を開けた。ちょうどその時、扉の向こうではそれ が最盛期で繰り広げられていたのである。そして、しばらくの硬直の後、エコ は不覚にもそのまま意識を失ってしまったのである。失神という失態を演じ て、気がついた彼の眼前には二つの同じ顔があった。
 レインボーカラー髪のつるつる肌のおばあさんが二人?
 エコがそう思ったのは双子の教官、マーリンとモーラであった。感情の乏し いグレーの双瞳が二組、失神したエコをすぐ上から覗きこんでいたのである。 通常なら考えられない状況化である。なぜならば、音楽のマーリンと言語学の モーラの身長は100cm。いくら成長が遅く背が低いエコであろうとこの状況は ありえないはずである。
 わ〜〜〜っ! わけのわからない大きな奇声音を立てながら、エコは起き上 がった。
「うるさいね〜♪」
 耳を塞ぎながらグレーの瞳に不機嫌な色を浮かべながら、歌ように音楽教官 マーリンが言った。
「意味不明な言葉で叫ぶのをやめなさい!」
 ぴしゃりと、正確な発音で言語学教官のモーラが命令口調で言ったのはマー リンと同時だった。
「今のは…。ぼくは…」
 大混乱のエコである。
「や〜れ、や〜れ〜♪」
「言葉は正しく! 発音は正しく!」
 また、二人の声が唱和する。
 二人の同調したようなキーキー声が大混乱のエコに更に拍車をかけた。エコ の喉から声にならない音が無意識に飛び出していた。ついで、エコは後頭部に 衝撃を感じ――。
 気がつくとまた、二人の顔がエコを見下ろしていた。さっき程と同じじゃな いのはエコの頭の鈍い痛みともう一つの別の顔である。

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