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 廊下を並んで歩くエコとリナの手前を、セーラが早足で進んでいく。何とかそれに追いつこうと…少なくとも引き離されてしまわないようにと、エコも必死に足を動かした。
「セーラ先輩、大丈夫でしょうか」
 リナが不安げに囁く。
 それを聞きたいのはぼくだって同じだとエコは思ったが、少し首を傾げるだけにとどめておいた。
「ちょっと戸惑ってるだけだと思うんだけどな…」
「…それなら良いんですけど」
 2人は同時にため息をついて、先ほどのことを思い出した。

 話は数分前にさかのぼる。

 一通りマシューに尋ねたかったことを聞き終え(しかし実際、マシューはあまり真実を教えようとはしてくれなかった。「自分で考えることが大切じゃ」と何度返されたことか)、エコ達が教官室を出ようとしたときのことだ。
 ふいにセーラがマシューの方を振り返った。
「ところでマシュー先生、羊皮紙は持ち主の真相を反映するとおっしゃいましたよね。聖人像が襲ってきたということは一体何を意味しているんですの? わたくしが危険思想を持っているとでも?」
 彼女の言葉に、マシューは小さく笑みをこぼした。
 少し思案するように首を傾げ、それからゆっくりとセーラを見つめる。
「危険思想、というのはやや言い過ぎのようじゃて。ふむ、わしも詳しくは言えんがの。セーラの場合、あれが示していたのは内に秘めた攻撃的なまでの情熱、野望…。それは時として誰かを傷つけることさえある。例えばエコやリナのような大切な人を、そうでなければ自分自身を」
 セーラは信じられない、とでも言うような表情を浮かべた。珍しく動揺しているのがエコにも分かる。
「まぁ、これはわしの考えにすぎん。しかし、あまり良い表れではないことは確かじゃ」
「…分かりましたわ。でも、これだけは断言できます。わたくしが自分で自分を窮地に追いやったり、ましてやエコ達を傷つけるだなんて、そんなこと有り得ませんわ」
「…そうじゃろうて。わしはその答えを聞きたかったんじゃよ」
 きょとんとした顔のセーラに向かって、マシューはにっこり微笑んで更に続ける。
「さぁ3人共、もう行った方が良い。それと、あまり危険なことに首を突っ込まぬように」
 あぁ、できればそうあってほしいんだけど…と思いながら、エコは怪訝そうなセーラ、そしてリナと共にマシューの部屋を後にしたのだった。


「セーラ、怒ってる?」
 心配になったエコがそう尋ねる。
 しかしセーラは足を止めることなく、静かに首を振った。
「わたくしはマシュー先生の言ったことが分からないだけですわ。わたくしの答えを聞きたかったというのはどういう意味なのかしら…」
「さぁ…ぼくも分からないよ」
「ところで先輩達、キトゥンさんに本を届けなくても良いんですか?」
 何気なくリナが呟く。その言葉で初めて本のことを思い出したエコとセーラであった。 「忘れてた!マシュー先生の所にすっかり長居しちゃったよ」
 どうするのさ、とばかりにエコはセーラを睨む。元はといえば、彼女がマシュー先生に会いに行こうなどと言い出したのがいけなかったのだ。
 その視線にむっとしたセーラが何か反論しようと口を開きかけた、その時。
「君達…やっと見つけた!」
 背後から聞こえたのは、今まさに話題となっていた人物の声だった。

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