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 ティーナの所に行こうと決めたエコとセーラは、真っ先に図書館へ向かった。リナは用事があるのだと言って、例の会議室へと続く紋章の前で別れた。
 図書館の扉をそっと開く。いつもなら勉強や何らかの調べものをする生徒でにぎわうそこも、今はひっそりと静まりかえっている。
「ティーナさん…いないのかしら」
 館内へと足を踏み入れ、残念そうにセーラが呟く。
 エコはそんな彼女の後ろ姿を眺めながら先ほどのことを思い出していた。

「あのときの、わたくしの願望は…」
 そこまで言って言葉を切ったセーラに、エコは怪訝そうな表情を浮かべる。いつもとは違うセーラの様子に、羊皮紙の話を持ち出したのはマズかったかもしれないと思ったが、言葉の続きが気になった。
「願望は、何だったのさ」
 琥珀色の瞳を覗き込むようにして、先を促す。
「貴方が知る必要はありませんわ」
  「…何それ」
「そんなことより、はやく図書館に向かわないと日が暮れてしまいますわよ! さぁ急いで、エコ」
 呆気にとられているエコにくるりと背を向けると、セーラはさっさと歩いていってしまった。心なしか歩調がはやいのは気のせいだろうか。
 エコは今日何度目になるか分からないため息をついて、その後を追ったのだった。

「エコ?どうかしまして?」
 セーラの声ではっと我に返る。
「ティーナさんはいない、みたいだね。残念だけど」
「えぇ…何か少しでも情報をいただけたらと思いましたのに」
「じゃ、別の場所を探してみようか?」
 そう言って2人が図書館を出ようとすると、
「君達、ちょっと待って」という声がした。
 驚いて振りかえると、書架の陰からフィンが顔を覗かせた。
「フィンさん! …ちょうど良いですわ。貴方に尋ねたいことがあったんですの」
 願ってもない事態だ。元々はフィンに会おうとしていた2人である。わざわざ図書館までやってきた甲斐があったというものだ。
「うん、たぶんそう言うと思った。どうして僕があの会議に出席していたのかということだろう?」
「分かっていらっしゃるのなら話ははやいですわね」
 エコがはらはらしながら見守る横で、フィンとセーラは話を進めていく。
「そうだな。簡単に言うと、僕の課題も君達の課題、つまり校歌についてのことだけど、それに関したものなんだ。内容は多少の違いがあるけどね」
「貴方に…?それなら、ザブレフさんも同じ理由で?」
「そんなところだね。聞きたいことはそれだけかい?」
「いえ、もう1つ。貴方はオール・セインツの思惑をお知りなんですの?」
 その質問にフィンはちょっと困ったような笑みを浮かべた。
 以前から不思議な人だと思っていたが、エコは改めてフィンのことをとらえどころがない人だと思う。彼はどこまで知っているのだろうか。彼は何を思ってここにいるのだろうか。
「オール・セインツの考えていることなんて分かるはずがない。キトゥンでさえも知らないのだからね」
「そうですの。分かりましたわ」
あっさりと引き下がるセーラを見て、エコはほっとする。フィンと折り合いが悪い彼女のことだから、どんな質問をするのだろうと心配していたのだが、どうやら杞憂であったようだ。
「それともう1つ」
 ふいにフィンが口を開く。
「校歌のことについて知りたいなら、彼女に聞いてみれば良いんじゃないかな。セーラなら誰のことか分かるだろう。ただし、彼女はちょっと気まぐれだけど…」
 意味深な言葉だった。エコには何のことかさっぱり分からなかったのだが。


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