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 エコはフィンにしては珍らしい行動に戸惑っていた。ザブレフと共にフィンを半ば走るに近い感じで追っているエコである。
 なぜ? という疑問を発したいが、フィンの歩みにはそんな言葉をかける余裕すら見出せない。フィンは涼しげな顔で軽やかに目的地へと足を運んでいるだけなのに。
 この自分の歩調の余裕のなさは、フィンとの身長差のせいではない。たかだか、5センチの差じゃないか。フィンは特別なんだ、たぶん……。
 身長に関わるとムキに否定的になるエコであった。
 確かに意見を求めに行ったけれど。どうして、その返答がこういう結果になってしまったのだろうか? ただ、意見を求めにいっただけなのに……。


 ここが同じダイナ学園の学生寮の部屋とは思えない。それが、エコが最初に抱いた感想である。
 フィンの部屋は古い部類のダイナ学園男子寮の建物にあった。元は教師寮だと言われているだけあって、細やかな装飾で内部は他の寮と比べて立派だ。噂で聞いた先入観から、余計にそう感じるのだろうか。ここには何かが、他の寮とは違う空気があるとエコは思っていた。
 そして、フィンの部屋は自分が抱いていた彼のイメージと違っていた。部屋はひどく人間的で、どこ懐かしい温かい雰囲気があるのだ。
「どうしたんだい?」
 コバルトブルーの瞳の持ち主が、入口で立ち止まったエコに呼びかけた。
「……はい。はい、すみません……」
 戸惑いながら、開いたままのどっしりとした扉をエコは慌てて閉めた。
 部屋の中にはすでに先客がいた。
「ザブレフさん……」


 なぜこんな遅い時間にエコがフィンの部屋を訪問してるのかいうと……。
   セーラ達と別れてから、しばらく、エコは自室で考えこんでいたが、思いきってフィンを尋ねることにしたのである。彼としてはセーラのいないところで、フィンの意見が聞きたかったのである。

「セーラのように、元々やるべきだったぼくがあの羊皮紙を発動させていたら、一体どういう状況が起こり得たと思いますか?」
 フィンのコバルトブルーの瞳が一瞬、嬉しそうに見えたのは気のせいだろうか?
「……そうだね。一つ、試してみようか? あの仕掛けが一度限りではないと考えて。どうかな?」
 いつもなら『それは、やってみなとわからないけれど……』と言葉を濁すフィンである。それが、この時ばかりはフィンらしからぬ返答だった。
 誰かと仲良く一緒にやるスタイルのフィンではないずだ。今まではそうだったのである。おかげで、ますます頭を悩ませる項目を増やしたエコである。
「フィンさん、でも、それだと……」
「あのマシュー先生の細工だよ。そんな事は万の一つも起らないと思うけどね。まぁ、そうなった時はそうなった時に考えないかい?」
 フィンの口調は説得力があった。自分から持ち出した事柄である以上、引くに引けない状況のエコである。フィンには何か特別な情報源なり考えがあってのことなのか。それとも、好奇心がただ勝っただけのことなのか。エコにはわからなかった。
 振り回されているつもりはないが、でも……。
 エコの不安が脹らんでいく夜だった。

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