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「足が反対ですわよ、エコ!」
 セーラは溜息をつき、やっていられないとばかりに首を振った。
「まったく何度おなじことを言えばわかりますの? わたくしに恥をかかせるおつもり?」
「そんなことないけど…」
「いいわ。リナ、ちょっとこちらに来てちょうだい。」
「何ですか、セーラ先輩?」
 セーラはリナの手をとって踊り出した。
「わぁー、セーラ先輩お上手ですね! すっごく踊りやすいですよー」
 リナはそう言ってくるくるまわっている。
 セーラはエコのパートを踊っているのだった。確かに上手で、エコはいきなり自分の部屋におしかけてきて、ダンスの練習などをさせられふてくされていたのも忘れ素直に感心していた。セーラから詳しく聞いたことはないけど、名門のルーセン家ともなればこれくらい当たり前なのかななどと思いながら。
 エコとリナの賞賛のまなざしに満足したのかセーラは踊るのをやめて、得意げにこう言った。
「エコ、わたくしリナと踊ってみてわかりましたわ。どうして貴方が下手なのか。身長差よ。エコが背が低いから踊りにくいのよ」
「だったらぼくじゃないパートナーを探せばいいだろ! ぼくが頼んだわけじゃないんだから」
 エコが珍しく本気で怒って言い返しても、
「まあ、しかたがありませんわね。けれど練習すれば少しはましになるはずよ。明日もみっちりしごいてさし上げますわ。」
 とセーラは笑顔で返した。なぜかすごく機嫌が良いようである。
「そんなことよりもエコ、わたくしとの約束をおぼえていて?」
「えっ、約束?」
「まぁ、もう忘れましたの。感謝祭の日のことですわ。」
「あぁ、思い出したよ。大陸に行く約束だよね。」
「なにを言っていますの。誰がそんなこと言いましたか。本当にエコは…。とにかく今度はそちらの準備に取り掛からないと。エコ行くわよ。」
 セーラは、まだ事情を飲み込めていない顔のエコをひっぱり、リナもつれて部屋を出た。

 ――ダイナ学園図書館
 大陸で一番の規模を誇り、ここにしかないという書物も数多く所蔵している。学園外のものは特別の許可がないと、卒業生以外は入れない。しかし出入り自由な生徒であっても立ち入ることのできない場所がある。図書館奥の通称「開かずの間」である。ここには封印されたままの数々の古書が眠っているという。学園にある多くの謎の中でも、知名度も注目度も一番であるこの部屋に立ち入ることのできる存在はいるのだろうか。

 広く静かな図書館では、ひそひそ声というものは結構響くのだが、そのことに全く気づいていない声の主は熱心に語りつづける。
「…というわけですのよ。わたくしの研究と調査の結果、これは間違いありませんわ。」
「毎年この時期部屋に閉じこもっていると思ってたけど、そんなことをしていたの?」
 何か嫌な思い出でもあるのかと気を使っていたエコはあきれたとばかりにそう言った。
「そんなこととはどういう意味ですの? あぁ、ありましたわ、この本ですわ。」
 その本は何かの詩集のようだった。簡単に開くことができ、魔法の類とは無縁に思えた。エコは不思議に思いつつも読み進めるうちにあることに気づいた。
「これって、もしかして。」
 そういってセーラの方を見ると、
「そうですわ。この本に載っている詩は、全てこの学園がぶたいとなっているのよ。それで、ここを見て頂戴。開かずの間が題材の詩よ。これを読み解くと…」
 うれしそうにそういうと、ある一篇の詩を指差した。
 それを覗き込むエコとリナ。
 しかしこの時点で気づくべきであった。開かずの間の秘密をかたくなに守り続ける学園が、そのようなものを放置しておくわけがないという、根本的なことに。

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