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 自室の窓の外はすでに暗くなりかけている。
 キトゥンは時計を見やり、小さくため息をついた。
 これでは1日が何時間あっても足りない。
 明後日の感謝祭の準備など、彼女は膨大な量の仕事を抱えていた。
 それに加えて厄介事が1つ。
「セーラ達はどうしてるのかしら…」
 あの性格だ、あの本のこと、そしてあの詩のことは諦めていないだろう。
 近頃のセーラ達は悩みの種である。
 キトゥンが2度目のため息をついたその時、ドアの向こうから、
「キトゥン、いるかい?」
 聞きなれた声。
 即座にドアの向こう側にいるであろう人物を思い浮かべて、キトゥンは椅子から立ち上がった。
 そして、ドアの向こうにいたのは。
「…フィン? どうしたの?」
 予想通りの人物だった。コバルトブルーの瞳が、悪戯っぽくキトゥンを見つめている。
「セーラ達のことだよ。彼女達はどうやら、ザブレフを仲間に引き入れ
たようだ」
「ザブレフを?」
 キトゥンの眉がひそめられる。
「彼は何か知ってるの?」
「そういう訳じゃないよ。僕が推したのさ」
「…どうしてそれを、私に伝えるの?」
 フィンの考えていることは、いつも読めない。
 これは彼なりの協力なのだろうか。それとも、何か別の…。
「明後日が楽しみだね」
 キトゥンの問いには答えず、フィンはにっこりと笑ってみせた。
「それじゃ。くれぐれも仕事のしすぎで体を壊さないように」
「待っ…」
 腕を掴んだと思った瞬間、フィンの姿は消えていた。
「…」
 何だか予感がする。
 特別な、それも決して良いものではない予感。
 フィンの意図がつかめないまま、キトゥンは静かにドアを閉めた。

 一方、セーラ達はというと。
「今日はこれくらいにしませんこと? ザブレフさんもだいぶ上達したことですし」
 数時間に及ぶダンスのレッスンを終えたところだった。
 さすがに、リナもザブレフも疲労の色を隠せない。
 先程の諍いのことなどすっかり忘れてしまったかのように、セーラが笑顔でエコに向き直って、言った。
「明後日が楽しみですわね、エコ」
「…う、うん」
 何も起こらないことを願わずにはいられないエコだった。

 …それぞれの思いを胸に、夜は更けていく。

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