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図書館には誰もいなかった。 いや、いないとセーラ達は思っていた。 魔法力が弱まっていたので普段と違って感覚は鈍くなっている。 果して、誰もいなかったのか…。 今朝の図書館は見知らぬ感じがした。収穫感謝祭独特のいつもと違う時間と 空間を醸し出している。セーラもエコもリナもザブレフも見なれたはずの図書 館のそれと違う佇まいに緊張していく自分達を感じていた。 「セーラ、やっぱり、これを使うの?」 ため息まじりにいい記憶を思い起こさない物を一瞥してからエコが言った。 「使いますわよ。リナ、見張り役をお願いいたしますわ」 そう言って、セーラはリナにルーセン家の糸電話を渡した。 それはよくできたもので、2つの糸が螺旋上に絡み合い、受信部と送信部がそ れぞれに繋がっていた。子供が離れた場所でお互いの会話を楽しむのには確か に面白いものだろう。しかし、この場面で使うのにはあまりにもお伽噺の趣向 が強いような…。 そんな、エコの思惑に気がついてセーラは余裕を見せた微笑を彼に向けた。 「前にも言いましたでしょう? ルーセン家の玩具も使う側の技量しだいです のよ」 普通に使うなら、それもいいだろうが、前回も予想だにしないことが起り対 処できなかった。今回とて、特殊な場合には変らない状況かである。エコの心 配はもっともであるのだが、セーラにそんな不安は通用しないようである。 「セーラ先輩のお宅にはいろいろな魔法道具があるんですか?」 好奇心に水色の瞳を輝かせながらリナが聞いた。 「ええ、ありますわ。でも、いろいろな面倒な決まり等があって滅多に持ち出 せませんの」 と残念そうにセーラは言った。だが、実際はそうは言いながら、いろいろと 祖母におねだりしているセーラである。確かに、たいした物はなかったが…。 エコはそう考えて、数日前に彼女の元に届いた大きな包物を思い出した。 「セーラ、他にも持ちこんでないだろうね?」 念を押すようにエコの強い口調だ。 相変わらず、エコはこのような感だけはいいですこと。 とセーラは内心では感心し、そ知らぬ顔でそれに応じた。 「先日、祖母から届きましたのは大ダンスパーティーの衣装ですわ。エコの分 もありましてよ」 「ぼくの?」 「わたくしのパートナーに相応しい物を身に付けていただかないと困りますも の」 「ペアー物なんですか? セーラ先輩。わぁ、素敵! エコ先輩、良かったです ね」 リナはエコに笑顔で語りかけていた。リナはリナなりの想像の中でワクワク しているのである。 エコといえば、引きつった表情を迂闊にも見せてしまっていた。予想外の話 に驚いたのだ。 エコが心配になるのも無理はない。ダンスパーティーと言っても、身につけ てるものは人それぞれである。仮装パーティーの趣が強いものから、華美な礼 服まで幅が広い。自由性が高い。 セーラがいったい、どのようなものを用意したのか? エコにはこれから起るであろう諸々とプラス悩みがまた一つ増やされた。エ コは心の中で深い深いため息をついた。 「大ダンスパーティーの衣装…。僕のは大丈夫かな…?」 低い声でぼそりとザブレフが呟いで、リナを見た。 |