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「…えっ?」
 図書館のカウンターの向こうのティーナはうっかり、意外そうな声を出してしまった。
 セーラはそれには気がつかなかったように、ニッコリ!とティーナに微笑みかけた。
「さすが、ティーナさんですわ。ザブレフさんの助言のおかげで納得した詩が完成出来そうですわ」
「お、お役にたててよかったわ…」
 ティーナが作り笑顔で答える。
「はい。それで、お礼も兼ねて、ザブレフさんにダンスを教えて差し上げる約束になってますの。今年はダンスにパートナーの方とご一緒に参加なさるとかで、お相手の方に恥ないダンスをなさりたいのですって」
「そう、それはよかったわ…」
 ティーナは感謝祭一色で染まった頭で考える。自分の都合のいい方へと…。今のティーナにとっては祭が一番の関心ごとだったのである。
 取り合えず、ザブレフはお目付け役&足を引っ張る役を成功させたと考えてもいいのよね。でも、パートナー…、紹介するとは言ったわ。確かに…。だけど、ザブレフはもう、決まったと思って勘違いしてる? ああ…、祭の準備で忙しいこの時に…。そうだわ! キトゥンに責任を取ってもらいましょう。
もともと、彼女がすべき事だしね。それより、祭…。
 セーラが思ったようにティーナの頭はすでに祭りのことでいっぱいだった。他の入る余地はないようである。

「セーラの嘘には脱帽するよ」
「あら、嘘ではなくてよ。策略と言いなおしていただきたいわ」
 エコのいつもの非難めいた言葉を軽く受け流し、自信たっぷりでセーラは答える。
 彼らはエコの部屋でリナ、そして、ザブレフと4人で集っていた。ティーナに宣言した通りにダンスの練習をすべく――。といっても、実際、練習をしているのはリナとザブレフである。セーラとエコはベットに座ってそれを眺めていた。
「で、どうして、ぼくの部屋でダンスの練習をしないと行けないんだい?」
「ここが一番広いからですわ」
「また、セーラはそうやって嘘をつく。そんなに違いはないだろう? 確かに角部屋で視覚的に出窓のぶん広いけど」
 セーラがやれやれという表情でエコを見た。
「広いのは確かです。エコの部屋は備え付けの机とベットとクローゼットしか置かれてませんもの。それにです。フィンさんのところからも寮が離れているでしょう?」
 フィンさんのところからは確かに男子寮でも離れた位置だけど、どうして部屋が他部屋より広いんだ!?
 エコの内心を見透かすようにセーラは大きな瞳に悪戯げな色を称えて、いつものセリフを言う。
「だから貴方は背が伸びないのよ」
「もうすぐ背が高くなるんだ!」
 大きなエコの声に吃驚して、リナとザブレフが足を止めた。
「2人とも続けて! 時間がなくてよ。感謝祭は明後日ですもの」
 上機嫌な感じでセーラは激を飛ばす。
 傍らではエコがムスッとしてあさっての方を向いていた。
 セーラは詩の最後の締めの言葉が気にかかってはいたが、なにぶんフィンを攻略する時間がない。ヘタに手を出すと計画そのものが頓挫する恐れもある。しかたなく、フィンから聞き出すのを諦めて、計画に全力投球する方を選んだ。ティーナもキトゥンも、この祭の準備で邪魔をする余裕はないだろうし…。ただ、フィンの行動が読めない点が気がかりではあった。
 さあ、セーラ、いよいよ。決戦の日は明後日よ!
 セーラの琥珀色の瞳がいっそう強い光を宿して輝いていた。

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